研究戦略部 DP・DR制度 研究者インタビュー

researcher interview

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IDEC国際連携機構 教育開発国際協力研究センター(CICE) 坂田 のぞみ 准教授

広島大学では、「特に優れた研究を行う教授職(DP:Distinguished Professor)及び若手教員(DR:Distinguished Researcher)」の認定制度を2013年2月1日に創設しました。DPは重点的課題に取り組むべき研究を行う特に優れた教授職、DRは将来DPとして活躍しうる若手人材として、研究活動を行っています。

アフリカや中南米の現地に根差した、より良い教育のあり方を探究する

教育を通して開発途上国の人々に貢献したい

私が専門とする比較国際教育学は、さまざまな国の教育のシステムや政策、実践を比較・分析し、教育のあり方について考える学問です。特にサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠より南に位置する地域)を中心に、開発途上国の教育政策と実践に焦点を当てて研究しています。

私がアフリカに関心を持ったきっかけは、小学生のときに習い始めたダンスでした。中学・高校でもダンスを続けていくうちに、ヒップホップのルーツはアフリカからアメリカに連れてこられた黒人たちのコミュニティであることを知り、興味を抱きました。

その後、大学2年生のときに学位留学でアメリカへ。主専攻は心理学を選択し、副専攻としてダンス学と人類学を学びました。その中で、ダンスを通じて興味を持ったアフリカの人たちが直面している貧困という現実が見えてきて、自分に何ができるのかと考えるようになりました。そこで、日本で教職課程を取っていた経験を生かし、教育の分野で貢献したいと考えたのです。そのために修士課程では教育人類学を専攻し、アフリカの教育について本格的に学ぶことにしました。また、ユニセフのインターンに参加して、タンザニアで3ヶ月間、研修生として働きながら修士論文のためのデータ収集も行いました。

その国の文化に根差した教育方法を模索

修士・博士課程では、タンザニアにおける学習者中心型教授法(アクティブラーニング、協調型学習など)の実践と適切性について研究しました。現在は地理的にさらに範囲を広げ、タンザニア、ガーナ、ケニア、メキシコといった国を対象に、アフリカと中南米の教育を比較して研究を行っています。

学習者中心型教授法は、教師が一方的に教えるのではなく、生徒・児童が主体的に学びに参加し、自分の興味やニーズに合わせて学ぶ内容や方法を選択する教授法です。日本の学習指導要領にも取り入れられていますし、ユニセフやユネスコといった国際機関も積極的に推進しているのですが、この教授法は必ずしも途上国の現実や文化に合うとは限りません。例えば、一つの教室に何百人もの子どもたちが詰め込まれているような学習環境で、「グループ学習をしましょう」「ディスカッションしてください」と言っても成り立たないのです。私は、欧米型の教授法を途上国にそのまま持ち込んでしまうこと自体を問題視するとともに、その背景にある経済的な力関係や植民地時代から続く声にはならない力関係にも批判的なまなざしを持たなくてはいけないと考えています。

一方で、現地でのインタビューや授業観察などを続けているうちに、現地で昔から行われてきた教授法と、欧米型の学習者中心型教授法との間に、実は親和性が高い部分もあることが見えてきました。例えば、アメリカの哲学者・教育学者、ジョン・デューイなどが提唱した「Learning by Doing(なすことによって学ぶ)」「Project Based Learning(課題解決型学習)」といった考え方は、農業や漁業のスキルを次世代に伝えていくような、自分たちの生活に密着した学習を大切にする現地の教育スタイルと共鳴する部分があります。そのため、欧米型の学習者中心型教授法を持ち込むことをただ批判するのではなく、現地の人々が価値を置く教授法についてよく知った上で教育政策を策定していくべきではないかと、研究を通じて提案していきたいと考えています。

メキシコでの調査で撮影した、農村部にある学校の教室

研究環境における南北の不均衡解消をめざしつつ、教育援助に関する研究も

私は、現場だけでなく、比較国際教育学の分野においても、グローバルノースの研究者がグローバルサウスに行って、データを集め、グローバルノースで理論化して発表するという、南北の力関係が依然としてあることを問題視しています。グローバルサウスの研究者がオーナーシップを持って研究し、自ら理論化していく流れを作りたいという思いがあり、現在はタンザニアやガーナの研究者との共同研究を進めています。グローバルサウスの研究者がリーダーシップを発揮できる研究環境づくりに少しでも貢献していくことは、私の研究者としての大切なミッションの一つです。

また、これまで私は国際機関の教育援助における欧米型の教授法に批判的なまなざしを向けて研究してきたのですが、国際機関の枠組みではない二国間の教育援助にも非常に興味を持っています。そのため、研究の2つ目の柱として、日本の教育援助のアプローチに関する研究も進めています。日本の援助機関(JICAなど)では、現地に長期滞在して文化を理解し、現地の人々と協力して教育方法を練り上げるアプローチを取っているため、こういった日本独自のアプローチを他国の援助と比較してみたいと考えています。このテーマに関しては政策文書を対象とした研究が盛んなものの、当事者の声を丁寧に掬い取った先行研究はあまり見られません。実証研究に基づき日本の教育援助について国際的に発表していくことで、他国にとっても参考になり得るでしょう。この2つ目の柱についても、今後注力して取り組んでいきたいと思います。