実施報告
人間社会科学研究科 金鍾成 准教授 (2025年度 広島大学研究ネットワーク形成支援助成制度【タイプB】)
| 名前 | 金鍾成 准教授 |
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| 所属 | 人間社会科学研究科 |
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イベント名: International Symposium「Education × Peace and Reconciliation」
- 開催期間: 2026年3月16日~2026年3月17日
- 開催場所: 南アフリカ共和国・ステレンボッシュ
- 総参加者数: 179名 (うち海外研究者178名)

本国際シンポジウム「Education × Peace and Reconciliation」では、南アフリカ共和国(アパルトヘイト)と日本(ヒロシマや戦争責任)という異なる歴史的文脈を往還しながら、困難な歴史が社会の中でいかに記憶されているのか、そしてそれに教育がどのように関わり得るのかを検討した。その過程で浮かび上がったのは、対話を単なる教授法としてではなく、他者とともに知を編み直していく営みとして捉え直す視点である。互いの発表は、それぞれの前提や自明性を揺さぶり合い、自らの立脚点を相対化しながら、一歩引いて思考を深める契機となった。
とりわけ南アフリカからの参加者が多い中で、日本の実践として提示した「より良いヒロシマ教科書づくりプロジェクト」は強い関心を集めた。異なる歴史認識や感情が交錯する場において、対立や違和感を回避するのではなく、それらを引き受けながらいかに対話を成立させるのかという問いは、南アフリカの文脈へと接続され、具体的な教育実践のあり方として検討された。こうした往還的な対話のプロセスそのものが、知見の共有にとどまらず、研究者間のみならず学生・院生間の関係性を編み直していく契機となった。
その成果として、Centre for the Study of the Afterlife of Violence and the Reparative Questとの継続的かつ組織的な交流の可能性が開かれたことは特筆に値する。さらに、今後の共同研究に向けた議論も具体化し、日本・南アフリカ・ルワンダの研究者が連携して、各国における困難な歴史との向き合い方を比較し、その成果と課題を見極めながら、教育が果たし得る役割を理論と実践の往還の中で探究していく構想が共有された。
このように本シンポジウムは、教育が困難な歴史をめぐる分断を固定化するのではなく、それを問い直し、乗り越えていくための公共的実践となり得ることを示した。同時に、対話を通して生起する葛藤や感情をいかに学びへと編み替えていくのかという課題も浮かび上がった。今後は、こうした知見を各国の教育現場へと接続し、具体的なカリキュラムや授業実践として展開していくことが求められる。