実施報告
IDEC国際連携機構 坂田のぞみ 准教授 (2025年度 広島大学研究ネットワーク形成支援助成制度【タイプB】)
| 名前 | 坂田 のぞみ 准教授 |
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| 所属 | IDEC国際連携機構 |
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イベント名: Teaching and Learning Approaches across Borders (TALAAB) Seminar
- 開催期間: 2025年12月8日~2025年12月10日
- 開催場所: ガーナ・レゴン
- 総参加者数: 55名 (うち海外研究者52名)

本セミナーは、国境を越えた共同研究(Cross-Border Research)における教育・学習アプローチのあり方を探究し、特に「教育の質」を共通の基盤として、異なる文化的・社会的文脈における研究協働の可能性と課題を明らかにすることを目的として実施された。
Teaching and Learning Approaches across Borders (TALAAB)は、国際的な研究者ネットワークとして、教育および国際開発分野における過去5年に渡り、共同研究を進めてきた。本セミナーは、これまでの研究成果を共有するとともに、ガーナにおける教師教育改革や国際協力事業の実践事例を通じて、今後の国際共同研究の発展に資する知見を提供することを狙いとして企画された。
12月8日当日は、以下のプログラムに基づきセミナーを実施した。まず、実施者(坂田のぞみ)による「TALAABの経験」をテーマとした基調講演から始まり、国境を越えた研究協働の意義、TALAABの成り立ち、これまでの研究プロジェクト、および国際学術誌への成果発信について紹介が行われた。参加者との対話を通じ、共同研究における価値観の共有や相互理解の重要性が確認された。
続いて、キャロライン・ポンテフラクト氏(Independent Practitioner and Researcher)が、INEE(Inter-Agency Network for Education in Emergencies)の最低基準を手がかりに、「教育の質」をグローバルな視点から捉えつつ、各国・地域の文脈に応じた適用の必要性について議論を行った。その後、ハンナ・エジャ氏(ケープコースト大学)およびアブラハム・オクラ氏(ガーナ大学)が、ガーナにおける教師教育改革プロジェクトを事例として、ローカル主導と援助主導のバランスという課題について報告を行い、政策的示唆を共有した。
午後の部では、クリス・イェーツ氏(ロンドン大学)が批判的実在論(Critical Realism)の理論的枠組みを教育・国際開発研究に応用する意義を解説し、ガーナでの研究分析における理論的貢献について説明した。続いて、ジェームス・サンカレ氏(東アフリカカトリック大学)および実施者が、国境を越えた研究協働における実務的課題(分析ツールの違い、理論枠組みの共有、AI翻訳ツールの活用等)を具体例とともに提示し、課題克服に向けた教訓を共有した。最後に、実施者が一日の総括を行い、参加者とともに今後の国際共同研究への関わり方について意見交換を行った。
本セミナーでは、大学教員、研究者、教育関係者等を中心に参加があり、国際的・学際的な視点から活発な議論が行われた。特に、ガーナの教育政策関係者・経験者や、研究対象として扱った同国教師改革プロジェクトの責任者らより、研究解釈や結果について対話できる場を持てたことは、研究成果を政策実践に還元させる上で大きな一歩となった。
本セミナーを通じて、国境を越えた教育研究における理論的・実践的課題が体系的に整理され、今後の国際共同研究や研究ネットワーク拡大に向けた基盤が強化された。今後は、本セミナーで得られた議論を基に、さらなる国際共同研究の立ち上げや、研究成果の学術論文・政策提言としての発信を進めていく予定である。また、異なる文化・言語背景を持つ研究者間の協働を円滑に進めるための、方法論の深化が課題として挙げられる。
12月9日・10日には、今回新しく加わったメンバーを含め、TALAAB内でのワークショップを開催した。前日に行った公開セミナーの反省に加え、脱植民地的視点を踏まえた研究のあり方や、南北間の対話の促進、AI・テクノロジーの活用といった、中長期的な共同研究の方向性について共通理解を得ることができた。今後も、TALAABの組織的な発展も視野に入れながら、学術研究と成果発信の双方を大切にした国際的な研究交流を継続していく所存である。